梅毒は現代でも脅威的な存在

梅毒は、トレポネーマ・パリダム(梅毒トレポネ−マ)という菌の感染によっておこる病気です。おもに性行為によって感染するため、性病の代表的なものとして知られています。
梅毒は世界中でみられる病気で、日本でもかつて猛威をふるいました。日本での最も古い梅毒患者の記録は1512年。大航海時代、ヨーロッパからインド、中国経て日本に流入したと言われています。
以後、日本では遊郭を中心に梅毒が広まっていきました。江戸時代から明治、戦前まで、梅毒は人々にとって身近な、そして恐ろしい病気でした。
当時は有効な治療手段がなく、病症が進むと無残な姿になって死を待つしかなかったのです。
近代になってペニシリンによるトレポネーマ・パリダムへの殺菌効果が発見され、ペニシリンによる梅毒治療が普及すると、梅毒は不治の病から、治療可能な病気へと変化しました。
日本では戦後にペニシリンが普及し、梅毒患者数は大きく減少しました。
それ以降、日本では何回かの小流行がありましたが、それでも90年代には年間の患者報告数は600人を下回っており、感染者数は長い間ほぼ横ばいの状態を続けていました。
しかし、2011年からその状況は変わります。患者数は再び増加に転じ、以降、毎年その数は増え続けています。
2010年には年間621人だった患者数が、2012年には875人に増加。2014年には1661人、2015年には2697人、そして2016年にはなんと4559人と、現代の梅毒患者数は急激に増加しているのです。
日本性感染症学会は、「梅毒の流行に関する注意喚起について」という文書を発表し、梅毒患者が近年急増していることについて警鐘を鳴らしています。
2017年には、既に4月の段階で1000人を突破。2016年を上回る患者数が報告されると予想されています。
ただし、これらはあくまで届け出があった患者の数です。自覚症状がなく、医療機関を受診しない人もいることを考慮すると、実際の感染者数はより多いと考えられています。

梅毒は放置すると死に至る病気!早期治療を!

梅毒に感染したら決して放置せず、できるだけ早期治療を行うことが大事です。
自然治癒することもあると報告されていますが、梅毒に感染していると知りながら、自然治癒を期待して放置しておくのはとても危険です。
治療をせずに、梅毒の症状が進んでいってしまった場合はどうなるのでしょうか。梅毒の症状は、次の4段階を経て重くなっていきます。

最初の症状は、感染からおよそ3~6週間の潜伏期間を経て表れます。まず、陰部や口の中、唇にしこりができます。膿を出しますが、とりたてて痛みはありません。
また、鼠径部のリンパ節が腫れることもありますが、これも痛みはありません。これらは3週間程度で自然に消えていきます。
その後、全身のリンパ節が腫れ、肌にはバラ疹と呼ばれる特徴的な赤い発疹や膿疱が表れます。
梅毒性脱毛といって、円形脱毛症や髪の毛全体が薄くなることも。こうした病変も、数週間から数か月ほどで消えていきます。しかし、梅毒じたいが治った訳では決してありません。
それから再び潜伏期を経て、ついでゴム腫と呼ばれるゴムのような腫瘍が、肌や筋肉、骨などに生じます。
現代ではここまで病気が進むことはまれですが、適切な治療を行わずに放置した場合、症状は次の段階へと進んでいってしまいます。
感染から10年以上がたち、最終的な段階に達すると、全身のあちこちに腫瘍が生じ、麻痺や痴呆、精神障害を起こします。そして脳や神経、脊髄が冒され、やがて死亡に至ります。
このように、梅毒は適切な治療を行わなければ、最終的には死亡することもある恐ろしい病気です。
軽い段階で病気を抑え、またさらなる感染を防ぐには、なんといっても早期治療が大事です。梅毒は昔の病気だと思わず、感染したかもしれないと思ったら、迷わずに受診することが必要です。