マダニによるウイルス感染症で死亡することもある

2011年に初めて中国で発表された、マダニ類に刺されることによってうつることで知られる感染症、重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:SFTS)ですが、日本国内でも2013年からこの病気が毎年報告されるようになりました。
2017年8月末までの患者数は、累計ですでに298人に達しており、うち死亡例は59人となっています。
西日本を中心に23府県から報告されており、季節的には5月から8月が多くなっています。
この病気はSFTSウイルスによって起こされるため、SFTSウイルスを持っているマダニに刺されることで感染します。
普通は数パーセント以下のマダニしかウイルスを持っていないとされますが、地域によってはもっと高い保有率のところもあります。
マダニが媒介する他の病気にはリケッチアによって起こされる日本紅斑熱、スピロヘータによって起こされるライム病、細菌によって起こされる野兎病などがありますが、重症熱性血小板減少症候群はウイルス性なので有効な抗生物質がないということから対症療法しかなく、余計に治りにくい原因となっています。

またワクチンもまだ開発されていません。
死亡率が致死率は6から30%と非常に高いことから世間ではとても恐れられており、この病気が報告された地域を中心にマスメディアを通じた注意喚起が呼びかけられています。
ウイルスを持ったマダニに刺されると、通常6日から2週間ほどで、発熱、嘔吐、下痢などの消化器症状があらわれます。
その他頭痛、筋肉痛、意識障害などの神経症状、リンパの腫れ、皮下出血や下血などの出血症状が現れたりします。
特に、白血球や血小板が減るという重篤な症状を示した場合は致死率が高くなっています。

マダニは刺す時に非常に強く皮膚に喰いついて長時間にわたって吸血する性質があるので、刺された部位には刺し傷が見つかる事もありますが、毛髪で覆われた部位であったり、刺されても痛みやかゆみがあまり強くない場合も多く、刺されたことに気付かない場合もあるので、症状が現れている人で、森林などマダニがいる可能性のある場所を訪れるようなことが2週間以内にあった場合には必ず医師に告げることが大切です。

蚊を媒介にした感染症が一番人間の命を奪っている

このように近頃では大変恐れられている重症熱性血小板減少症候群ですが、感染症全体で見た場合、蚊が媒介する多くの感染症に比べると患者数はまだまだ少数であるというのが事実なのです。
世界規模で見ると、蚊によって媒介される感染症であるマラリアが断然多く、世界保健機関の報告によると年間約2億人が発症、200万人以上が亡くなっているという現状です。
重症化した場合には短期間で死に至ります。

デング熱もマラリア同様に蚊によって媒介される、発熱を主症状とする病気で、毎年5000万人から1億人が感染すると言われています。
デング熱も有効な薬は無く、重症化するとデング出血熱で死亡する場合もあります。
このように、ダニによって媒介される病気よりも蚊によって媒介される病気のほうが世界には断然多くなっています。
マラリアやデング熱は人から人へうつります。
このため流行地では、一度に多くの人が、患者を刺した蚊に刺されることによって感染します。

しかし、重症熱性血小板減少症候群の場合、ウイルスを保有しているのもともと人間ではなく、鹿、イノシシなどの野生動物や犬、猫などであるとされています。
ウイルスを持つ動物を刺したマダニに人間が刺される事によってウイルスをもらうわけです。
基本的に人から人へうつるのではありませんし、前述したように、すべてのマダニがウイルスを持っているわけではなく、ほんの数パーセントのウイルスを持っているダニにたまたま刺された場合に感染するわけですから感染が成立する確率としてはそれほど多くないということがいえます。
重症熱性血小板減少症候群については、病気についての正しい知識を持って、ダニに刺されないように予防対策をしっかりしておけば、むやみに恐れる必要はないという事を心に留めておきたいものです。